東欧をさすらっていたT氏から、ところどころからメールや電話が届くことで、遠い土地を旅している感覚を思い出します。もうじきセルビアへ入国するので、しばらく電波が繋がらないからと、短い電話があった時、また、日本にいると遠くなった感覚が少し蘇ります。
バルカン半島の国々では、民族の違いから生じた(そして欧米露の内政干渉も潜在的には影響しあって)国家間の紛争が終結したように見えても、土地を訪れるといまだにクリアにはなっていないことを体感する状態です。とはいえ、市民はいたって平穏に日常生活を送っているのですから、ほんの少し観光で滞在している程度では気づかないことが多いのでしょう。私がセルビアやクロアチア、ボスニアを旅した時にはそうでした。入出国する際にT氏が気を遣っていたことは印象に残っているのですが、今回の旅でも、自由にお好みの旅程を組むことはできないのが現状のようです。
国境のない日本で暮らしていると、想像できない感覚です。電波や文化は政治的な影響を受けないかぎり、自由に海を越えられる時代になりました。隣り合う国境を越えると文字も言語も宗教も違う国々では、心や記憶も長い民族の歴史から自由になるのは難しいのかもしれません。彼の国々の様子は、3年前と、去年と、今年はどんな違いがあるでしょうか。旅の話が待ち遠しく思います。